先週より今日4月19日まで主人の長男がイギリスから日本に遊びに来ておりました。

彼との接点は今から約22年前…。私が渡英した初期の段階に主人を通して出会いました。

私がイギリスに連れて行った当時としては非常に珍しいメインクーンと言う猫を見るために主人に連れられて私のアパートに来たのが始まりです。

当時彼はまだ12歳、本当に初々しいガラスのように繊細な美少年でした。

 少し距離のある接点を時折重ねながら彼らの家庭が抱えている問題も見えて来ました。

結婚から不協和音を抱えていた家庭はその頃はもう冷え切っていました。

彼らの母親は自身の病気を理由にほとんどの時をイギリスを離れて暮らし、主人が一人で彼らを養育している状況でした。

イギリスで緩和ケアを学びたいという私の野心に主人は手を貸し、私とともに時間を過ごすことで自身の心の寂しさを埋めてゆきました。

私がイギリスでの医師免許を修得し、現地の医療現場にも出入りし、ロンドン大学においても緩和ケアを体系だって学んでいた頃

そして日本から呼び返しが入った頃、私が日本への帰国を決意し始めたころ、主人の子供たちもそろそろ親からの旅立ちの時を迎えていました。

20年間自身の人生を子供たちのために犠牲にしてきた主人はこのタイミングで私と人生の残りを過ごすことを希望しました。

棚上げとなっていた離婚問題を片付け財産問題を処理し、すべてを前妻に渡し、若干の修羅場を経た後スーツケース一つで日本に来ました。

しかし、実際に子供たちを育て上げたのは主人…。

その人がイギリスを離れ日本に旅立ってしまうことに彼ら子供達には受忍できない強い感情がありました。

それから16年余り…

お嬢さんも息子さんも人生を重ね、人生の辛さも喜びも味わってきたとの話を聞いていました。

息子さんは年月の流れの間に彼自身もともと所有していた絵の才能に磨きをかけると同時にイギリスの陸軍に入隊しました。

そして自身離婚も経験し…。

私にとって今回16年ぶりの出会いとなった訳です。

お父様を奪ってしまったという彼らに対しての申し訳なさもありますし、

この年月私自身、自身の力を振り絞ってイギリスにあのまま残っていたよりも快適な人生を送っていただいてきたという自負もあります。

それら複雑に交錯する思いを飲み込んで息子の方とその友人(彼の上官)を受け入れ、日本を楽しんで欲しいとさまざまにプランをくみたてました。

会ってみると私が知っていたよりもはるかに大人になり、人間的にも成熟しておりました。

本当にいい出会いに恵まれ、彼らと楽しい時間を過ごすことが出来ました。

今イギリスに旅立たれ、寂しいと感じています。

血はつながっていませんが、本当に息子の様に感じられ、向こうも私の病状を主人を通して知っており気遣ってくれました。

それが本当に嬉しくて…。

年月の流れの中にそれぞれの恩讐が飲み込まれ、浄化されたような気がして…。

   (でも、仕掛けた私の方が簡単に許されたと思いあがってはいけないですね…)

   

                                           ホテルの庭の海で釣りを楽しむ二人

 

        

                                                                        赤目四十八滝を散策する彼ら