好まない人にロビンスが行ったいたずらの最も頻度の多いものと言えば、思い出すのは…

   勉強会のために私の住む住居に来た人に対し、玄関に脱いだ靴に放尿するというものでした。

 靴は濡れますし、彼の尿によるにおいのためにほぼ使い物にならなくなってしまいました。

  水洗いをしても、その匂いを完全に除くことはできなかったです。

 

そのいたずらに用心をして彼の届かないところに靴を片付けるようにしたのですが

 私の想像を超えたいたずらをしてきました。

冬のある日、勉強会の目的で来ていた同級生に対し、異常なほどに親しげにのどを鳴らし、近づく彼…

いつも冷たい視線で見つめていた彼がなぜか異常に近づいていきます。

気をよくして彼をなでる同級生、のどをゴロゴロ鳴らして喜ぶロビンス。

でも次の瞬間彼が行ったことは…彼が自身の横に脱いでおいたコートの上で放尿…。

そしてさっさっと去っていくロビンス…。全員目が点になって…。

でもその数年後に私は手ひどい形で彼に煮え湯を飲ませられたので、それを事前から警告していたのかな?とも思うのです。

彼をおいて数日私が病院見学で留守にすると帰って来た時に敷布団、掛け布団に放尿されたり…。

コンピューターの線はかみ切られていたり等々。

あの最初のおとなしさは片鱗も見られませんでした。彼の意図的な演技だったのでしょうか。

でも私が暇な時には自転車の荷台に彼を載せて観光客の比較的少ない上賀茂神社、賀茂川の土手などにハイキングに出かけました。

その時は彼も外気を楽しんでいました。一人と一匹の妙な取り合わせでで春の温かい日差しを楽しみました。

でもとにかく珍しい猫だったので、周りの人がすぐに近づいてきました。すると私の後ろに隠れるのです、幼い子供の様に…。

京大医学部卒業1年後に研修先の変更で京都から大阪へと移動することとなりました。

勿論、彼もともに引っ越しをしました。

そして次は大阪からイギリス…。

いよいよ大阪からイギリスに行くことに決まってきたとき、彼を日本に残していくことはできないと考えました。

イギリスへの滞在が何年にも及ぶと思われた状況に、彼も連れて行こうと考えました。

猫を国外からイギリスに持ち込むことが可能かどうか、調べることから仕事を開始しました。

そしてまず分かったことは何も準備をせずにイギリスに持ち込みを図った場合には半年間検疫所に止めおきになるということでした。

これは猫だけでなく、犬でも同様でした。その期間に死亡するペットもあるとの情報でした。

ではこの検疫所留め置きを何とか回避する手立てはというと、不可能ではありませんが相当な準備を必要とするものでした。

まず彼にマイクロチップを埋め込むこと。

今日では日本でもマイクロチップは義務付けられていますが、

    今から25年余り前、マイクロチップの埋め込みを行ってくれる獣医の方を見つけることは簡単ではありませんでした。

数軒の動物病院に電話して、いずれも不可能との答えに最後の獣医の方に

   『そういうことを行ってくれる獣医の方はご存じではないですか。』と尋ねました。

『もしかしたら、彼ならば…  』との自信のなさそうな答えでしたが、その言葉を手がかりとして漸くに見つけることが出来ました。

そしてその獣医の方にインターネットから印刷した書類を見せました。

私の行おうとしていることに彼も驚きましたが、協力はしてくださいました。

昔のことなので順番が違っているかもしれませんが、まず彼の血清を採取すること、そしてそれを指定されたイギリスの検査機関に送ること、

血清採取後狂犬病の予防接種を行うこと、たぶんそれが必要な手続きだったと思います。

この時に獣医の方が『彼の心臓に少しおかしいと思われることがあって、心臓のエコーをトライしてみたのだけれど、どうしても取らせようとしないですよ。』

とおっしゃられました。

この時、イギリス行きの準備ができたことに浮かれていた私はこの言葉をほとんど無視してしまったのですが、そのことを後にイギリスで深く後悔することとなります。

でもどうにかその動物病院にて血清を採取してもらいイギリスの検査機関にそれを送った後、

半年を待たず、検査機関の返事も届かないうちに日本を出国することになりました。

寒くなる前にイギリスに入りたいと望んだのです。彼の地の寒さに若干の恐怖心を抱いていましたから…。

計算では彼は二か月程度検疫所で暮らす事になる予定でしたが、その期間に私がイギリスでの生活を軌道に乗せ、その後検疫所から彼を引き取る心づもりでした。

7月の初旬日本を離れることになり、自身の格安の航空券とロビンスは経由地を挟むことで起こる問題点を避けるために関空からロンドンヒースローへのJAL直行便のペット用の貨物室を予約しました。

 

 なんと私の航空券は往復で10万円弱だったのに、食事も出ない彼のロンドンまでの片道の航空券は12万円でした。

そして大阪から一度和歌山の自宅に引っ越し和歌山で準備を再度整えなおし、2週間余り後イギリスに出発、の予定でした。

ところが引っ越しの最中に大阪で彼が消えたのです。

彼を捜索するために彼の貨物室予約をキャンセルし、

自身の航空券を変更しようとしてとんでもない事実が判明することとなるのです。