昔、今から30年以上も前の事。
京都大学の医学部に入学した頃、生活費諸々を得るために家庭教師で京都を走り回っていました。
京都での生活は初めてでしたので、知らないことが多くありそれゆえに思いがけない経験をたくさんしました。
まず一つ目、肝臓がん末期の父親をかかえての京都移住でしたので、
万が一を考えて居を油小路と言う通り沿い、烏丸と堀川の間に定めました。
それは京都の繁華街の真ん中でした。非常に交通の便利の良い場所で阪急の駅、京都の地下鉄の駅にも歩いて3分。
地下鉄を使えば簡単に京都駅にアクセスできました。家を出れば簡単にタクシーを拾うことができるし…。京阪の駅にも徒歩圏内でした。
交通の便が良い事、この上ない環境でした。結果、家賃が…でした(笑)。
京都大学まで自転車で25分ぐらい、約5kmの距離を毎日自転車で通っていました。
京都の中心故にそこは鉾町だったのです。この事の意味は祇園祭のシーズンになるまでわかりませんでした。
京都生活一年目の7月のある日のこと、いつもどおり朝の8時前に自転車で自宅を出発したのです。その時町は全く静かでした。
鉾が立てられてあるということ、祇園祭が近いことは認識していました。
大学の同級生の間でも『長刀鉾に上りに行こうか。』とか『女子は登れないので残念。』などと話は出ていました。
しかし、夕方帰ってきて、自宅の近い所でものすごい人波に仰天しました。
尚、都合の悪いことに大学に行くために東西にも南北にも走らないといけないのですが、この東西に走るときに私は錦市場の中を使っていたのです。
祭りの人波で立錐の余地もない錦市場の通りの中へ自転車で突っ込んでしまったのですから、起こった状況はご想像にお任せします。
罵倒を浴びながら、『ごめんなさい。』を連発しても、全く抜け出せない。人も動かなければ、自転車も動かせない。
あと、自宅まで3分ほどの距離に来ているのに全くどうしようもない状況。どうにかやっとのことで抜け出しても今度は四条通を南北に横切ることができない。
果てしなく大回りをして、今度は自分の住居に至る道もこれまた人ごみでダメ…。
果てしない時間をかけて自宅帰り着くことができましたが…。
翌年からは賢くなりました。 私の対策はその日は4コマ目の授業はすっぽかして、自宅に早く帰ること、あまり建設的な対策とは言えませんが。
二つ目の失敗…。
家庭教師を知り合いの京都大学の先生から頼まれて山科に通っていました。
その先生の知人の息子さんが同〇〇の中等部に入れるように教えてくれとのことでした。
山科に行くために利用してたのは当時京津線と呼ばれていた路面電車でした。
今はもう路面電車はなくなり、地下鉄の東西線となっていますが…。
ある日の事、いつもの様に路面電車で山科に行こうとした私はとてつもなく車内が混んでいることに気が付きました。
私は始発の京阪三条から乗車したのですが、発車の時から既に車内はひどい混雑でした。
にもかかわらず途中の駅からも一杯人がどんどん乗車してくる。(その中のいくつかの駅は今はもうありませんが)
乗り込んでくる人のためにどんどん奥に追いやられて…。同じ言葉ばかり連発していますが、最後には立錐の余地もなく…。
結果、山科駅で降りることが出来ず、大津まで行って引き返すことになってしまいました!!!
この日はなんと琵琶湖花火の日だったのです。
家庭教師予定の時間より遅れたのは言うまでもないことです。
上賀茂にも家庭教師に行っておりました。
初めて上賀茂に行ったときにその社家町の美しさに魅せられました。
この写真が社家町の風情…
それぞれの家が用水路と言うか、小川みたいなのを渡って入るようになっています。
さすがにこのあたりになると観光客も幾分減って、京都の中心部に比べると落ち着いた風情が漂っていて私の好きなエリアなのですが。
上賀茂神社の近くには上賀茂神社の摂社である大田神社もあり、そこは平安時代から続くカキツバタの名所で
このあたり京都の三大漬物の一つ、すぐき漬けの産地ともなっています。
すぐきながこのあたりで栽培されるようになった経緯については諸説あり、確定していないのですが
上賀茂神社の社家が栽培し、上賀茂神社から朝廷に納められていたが最も広く信じられている説かな…と私の中では納得しています。
で、昔家庭教師に行っていた家の方よりすぐき漬けを頂きました。
『貴重なものだし、お父様にも健康に良いから。』と言うことで。
で、自分も食してみたが30代の頃、それほどにおいしいとは思えませんでした、残念ながら。
ところが、今回自分の病気で京都に行くことが増えて
『確か、すぐき漬けって、乳酸発酵で、肝臓にも良く抗がん作用とかもあるよね。』
とか、思い出しました。
すぐき漬けと言うと社家町の一角に有名な歴史あるお店があります。
そこで買い求めて食してみると、昔はそれほどにおいしいと思えなかったものが今はとてもおいしく感じられます。
『やっぱり体が欲しているのかな?単に年齢のせい?』
これならずっと食べられそう…。
でもお値段が…。
少しだけたまに食べるのであればそれでも良いのだけれど抗がん作用を期待して毎日食べるには少し痛い金額…。
で、京都の友人に相談して、力を貸してくれと頼みました。
で、『手筈ができた。』とのことで18日彼女に呼ばれて京都に出かけました。
彼女の案内で上賀茂近辺のお百姓さん、つまりすぐきなを栽培している農家さん巡りとなりました。
公に販売しているわけでもなく、自分たちが食べる分、知人に分けてあげる分だけを
自分たちが栽培しているすぐきなを利用して漬物を作っている農家さん。
その農家さんを訪れるために狭い道、農道のごとき場所を車で走りまわることとなりました。
勿論、京都特有の一方通行の多い道です。
個人のお宅に着くと、友人の紹介でつかつかと入って行って倉庫に案内されて、樽から分けてもらう状態…。
つまり百姓家さんの知人の仲間入りを友人の紹介でさせてもらったという具合。
値段は百姓さんの思うままに支払って来ました。
でもお店で買うよりずっと、ずっと…懐に優しい金額。
で、数軒の御百姓さんを廻って、購入できた大量にすぐき漬物を今年分として今冷凍庫で保存している状態。
これから一年かけて、ゆっくりと頂いていきます。
これで乳癌の再発を防ぐ、いくばくかの助けになると良いけれど…。
ってそれが医師の考え方、って自身で突っ込みを入れています(笑)。