今日再びクリニックの休みを活用して京都に行っておりました。

目的は昨年のブログにも話題として使用したすぐきでした。

今日はお百姓さんの漬けられたすぐきの深漬けになったものを買いに行って参りました。

  で、その機会を利用してタルトタタンも買い求めて参りました。

さるあてがあり、新年のご挨拶の品物として使用するつもりです。

  

  これがその問題のタルトタタンです。

 タルトタタン、フランスでホテルタタンを経営していたタタン姉妹の失敗から生まれたお菓子だそうです。

って、お店の完全な受け売りなのですが…。

このお店或いはカフェ、名をラ·ヴァチュールと言い、平安神宮の傍にあります。

私が京都大学で勉強していた頃よく訪れていましたが、洗練された本当に素敵な老御夫婦で経営されていたカフェでした。

いつお伺いしても、老夫人が店の片隅でリンゴの皮を剝いている光景がそこにはありました。

大きなボールに皮のむいたリンゴが山の様に積み上げられ、それでも休むことなく皮をむき続けていました。

作ることのできるタルトタタンの数が限られているとのことで、2人で1個のタルトタタンが注文できる…

と決まっておりました。

でも一人で行くと1個注文できたので…。それが何か得をしたように感じられて…。

よく一人でケーキを頂きに行っておりました。

おばあさまと同じ様に素敵にお年を重ねられた

ダンディなご主人が少しあぶなかっしい手つきで飲み物を運んでくださる様子にとても心和みました。

それがとてもおいしいアップルティーでタルトタタンのリンゴと絶妙なハーモニーを奏で、本当に美味でした。

こじんまりと居心地よくしつらえられた店内は程よい大きさでよく行列ができておりました。

調理を含めすべてが老御夫婦二人だけの手によって行われていたようで、売り切れてしまうこともしばしばで、

『もう、タルトタタンはないです。』と言う言葉も珍しい事ではありませんでした。

京大を卒業して後、京都で一年、大阪で二年余り、私の人生の転変を経験しイギリスで6年余り、

それらの年月を越えて主人と訪問した時、男性は既に亡くなられていましたが女性の方はまだ存命でした。

そしてフランスで授与されたタルトタタンに関する資格書等を主人に翻訳してくれと頼まれました。

主人がフランス語を英語に翻訳し、私がそこから日本語に翻訳して彼女に伝えました。

もとよりそれほどに複雑なことが書かれているわけではなく、

彼女が正当なタルトタタンの作り方をフランスで学習したこと、

そして彼女の作るタルトタタンが正当な本格的なタルトタタンであることを

認定するといった内容だったと記憶しております。

そしてしばらくして彼女もこの世を去りました。

今店は彼女のお孫さんにあたる女性に引き継がれ、彼女がフランスから持ち込んだ味が受け継がれておられます。

今も老御夫婦がフランスから受け継がれたタルトタタンの味を楽しむ人でカフェの前に長い行列ができています。

時折、カフェにタルトタタンとアップルティーを楽しむために立ち寄り、

そして一年に一度、ないし二度贈り物として特別に調理して頂きます。

店の一角には在りし日のガウンをお召しになられたおばあさまの写真が飾られています。

貴重なタルトタタンの味が受け継がれていっていることに本当にうれしく感じます。

いつまでも、いつまでもこの味が受け継がれていくことを心から願わずにはいられないのです。